気温が上がってくると、冷たい飲み物が欲しくなりますね。
昔の日本では、冷やして飲むのは麦茶と決まっていましたが・・・今では緑茶やウーロン茶、ジャスミン茶、ほうじ茶など、いろんな種類のお茶が季節を問わず冷たいドリンクとして市販される時代となりました。
もちろん和紅茶も、暑い季節はぜひアイスで楽しんでみましょう。
西洋の紅茶に比べるとクセがない“緑茶寄りの紅茶”なので、冷やしても飲みやすいのがいいところ。熱中症予防や水分補給だけでなく、ビタミンやミネラルの摂取もできる健康にいい飲み物です。
アイスティーを世に広めたのは「アメリカ万博に参加したイギリス人」
今でこそ日本では当たり前のように飲まれているアイスティー。
その発祥については諸説あり、19世紀には氷を入れた紅茶、冷蔵庫で冷やした紅茶が飲まれており、レシピも発表されていたという話も。
しかし過去をさかのぼれば「紅茶をアイスで飲む」という文化は、意外な形で普及を始めた歴史があります。
契機は1904年のアメリカ・セントルイス万博。イギリスの紅茶商リチャード・ブレチンデンはインド紅茶をPRするため、来場客に試飲を勧めていました。しかし会場は連日の猛暑続き。熱いお湯で淹れた紅茶は見向きもされません。
暑い中でも人を呼び寄せるためにブレチンデンが考えたのは「紅茶に砕いた氷を入れて提供する」という作戦。これが冷たい飲み物を求めていた人たちの目に留まって大評判に。この出来事をきっかけに「紅茶はアイスでも美味しい」という噂が広がり、アイスティーの認知につながっていったといわれています。
紅茶を「アイスで飲む習慣」ある国・ない国
アメリカで広まり、日本でも一般的な飲み物となったアイスティー。
しかし紅茶の本場イギリスでは、紅茶を冷やして飲む文化は一般的ではありません。
紅茶特有の風味は熱湯で淹れてこそ引き立つもの。イギリスは日本のような猛暑がほとんどなく涼しい気候なので、紅茶をアイスで飲む必要性そのものが小さいのです。中には「わざわざ冷たくして飲みたくない」「邪道だ」と言って受け入れない人もいるそうで、独自の紅茶文化を持つ国ならではのプライドも見え隠れします。
他のヨーロッパ各国でも、シンプルなアイスティーはそれほど飲まれていない模様。オランダやベルギーのアイスティーは炭酸入りがスタンダード。イタリアでは「イタリアンアイスティー」がよく飲まれていますが、これは紅茶ではなくリキュールをベースにしたカクテル(お酒)の名前です。
シンガポールで進む「甘い飲み物を減らす政策」
日本ではアイスティーをストレートで飲むことはそれほど珍しくありませんが、海外だと甘くして飲むのが一般的。特にアジア各国ではカフェなどでガムシロップを山のように入れてから飲む人の姿が普通に見られます。
しかしこの愛飲習慣がもたらしたのは、砂糖の過剰摂取による健康への悪影響。
生活習慣病の1つである糖尿病の罹患率上昇が、アジア全体で問題視されるようになりました。
中でも糖尿病患者数の増加が顕著となったシンガポールでは「国民は砂糖の半分以上を飲料から摂取している」という調査結果のもと、2017年以降国を挙げて甘い飲み物の消費を抑制する取り組みが行われています。
2022年からは糖分(または飽和脂肪酸)の高いパッケージ甘味飲料を対象に、含有量に応じてA~Dの4段階で分類(Nutri-Gradeグレード)を実施。最も糖分が高いDの商品には、メディア広告を全面禁止して消費者の購買意欲に歯止めをかけるというかなり踏み込んだ施策です。
今も現地のコンビニやスーパーで売られている主流は紅茶、緑茶ともに「砂糖入り、はちみつ入り」ですが、コロナ禍によって国民の健康志向にも変化が生じている模様。以前はほとんど見られなかった無糖アイスティーの缶やペットボトルも店頭に並ぶ割合が増えているようです。
和紅茶がアイスでも飲みやすい理由
のどの渇きを癒す目的で飲まれることも多いアイスティー。たくさんの量をゴクゴク飲みたい人にとっては味だけでなく「飲みやすさ」も求めたい点となりますが、和紅茶はそのニーズに適した茶葉といえます。
和紅茶の特徴は強すぎない香りとクセのない飲み心地。風味を適度に味わいつつ、冷たさをしっかりのどで感じられるバランスの良さが魅力です。冷たい緑茶や麦茶もいいですが、アイスの和紅茶も水分やビタミン、ミネラルもしっかり補給できる夏にピッタリの健康飲料です。