日本の紅茶生産量は年間250トン前後。全世界の1%にも満たない少なさです。 紅茶も緑茶と同じ木から作ることができて、日本人も日常的に紅茶を愛飲しています。しかし日本で消費されているのはほとんどが輸入茶葉。国産の「和紅茶」がマイナーな理由はどこにあるのでしょうか? 各方面から推測していきます。
日本は「ティーベルト」のほぼ北端
紅茶が多く作られている国はすべて、北緯45度から南緯35度の間に位置する「ティーベルト」と呼ばれる範囲。赤道を挟んでおり、1年を通して温暖、降水量が多いなど紅茶の栽培に適した条件が揃っています。
地図を見ると日本もティーベルトの圏内なので紅茶の栽培は可能ですが、位置としてはほぼ北端。対してインド、スリランカ、ケニアといった主要生産国はどこもティーベルトの中心となる赤道に近い場所に国土があります。
世界的な品種に共通する「厳しい栽培環境」
世界的に有名な産地で栽培されるブランド茶葉に共通しているのは、どこも「茶葉にとって厳しい環境」で育っている点です。
世界三大紅茶の1つ「ダージリン」が栽培、収穫されるダージリン地方(インド)は東ヒマラヤ山麓に位置しており、平均標高は約2100メートル。朝晩の激しい気温差やこの地方特有の霧が、良質の紅茶葉を作り出しています。
そしてダージリンに似た気象条件を持つのがスリランカ南東部のウバ地方。この地で育つ「ウバ」も世界三大紅茶の1つに数えられます。
また「アッサム」で知られるインド北東部のアッサム平原は、世界でも有数の雨が多い地域。ここもヒマラヤ山脈の麓にあり、高温多湿の気候と肥沃な土壌が茶葉にコクのある味わいを与えます。
美味しい紅茶にはそれなりの要因があるのです。
「紅茶よりコーヒー」の国民嗜好
紅茶は嫌いではないけれど、やっぱりコーヒーがいい。
このような日本人の好みも普及の度合いに関係しているといえます。
2020年にLINEが15~59歳の男女を対象に「コーヒー派?紅茶派?」と題した調査を実施したところ「コーヒー派が7割、紅茶派が3割」という結果が出ました。
また森永乳業が2015年に各国で行った調査によると、日本で朝に紅茶を飲む人の割合はわずか5.5%。インド(34.5%)に比べて6分の1しかありません。
かつては緑茶が主流だった日本人の飲み物も、食やライフスタイルの変化によって選択の幅が広がりました。
中でもコーヒーは家庭だけでなく職場でも飲まれる一杯としてすっかり定着した感もあります。缶飲料やインスタントなどの登場でお手軽さが増したことや、アメリカのコーヒーチェーンが複数上陸してきた影響も大きいでしょう。
「和紅茶」はまだまだなじみが薄い?
ダージリンやウバには及ばなくとも、紅茶栽培に適した地域は複数存在します。 茶全体の生産量では世界10位前後のシェアを持つ日本にも紅茶栽培の長い歴史があり、この国らしい味わいを持つ「和紅茶」が各地で作られているのです。 国内での認知や普及はこれからかもしれませんが、紅茶においても“Made in Japan”の品質と信頼はすでに世界から注目されています。
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